否定・非難と批判は、表面的にはどちらも「何かを良くないと指摘する」点で似ているけれど、その意図やスタンス、人間関係への影響が大きく異なる。以下、5つの視点から違いを整理してみたい。
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A)ねらいの違い
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否定:相手の主張・行動を「受け入れない」姿勢。多くは「そのままは認められない」「そもそも違う」という線引きを示すだけで、必ずしも改善策や代替案の提示を伴わない。
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批判:相手の主張・行動を“評価”し、良い点・悪い点を「分析する」姿勢。問題点を指摘するだけでなく、なぜ問題なのか、どう改善すればよいかまでを検討することも含まれる。
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B)対象へのフォーカス
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否定:対象そのもの(意見や提案)を切り捨てるニュアンスが強い。「それは違う」「ダメだ」の一点張りになりやすい。
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批判:対象をより深く理解しようとし、長所・短所を天秤にかける。評価のプロセスがあるので、複数の側面から検討される。
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C)人間関係への影響
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否定:相手に“拒絶感”を与えやすく、防衛的な反応(説明や言い訳)を誘発しがち。
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批判:適切に行えば「改善のヒント」「学習の機会」を提供し、建設的な議論につながる。ただし、伝え方を誤ると傷つけてしまうこともある。
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D)建設性の有無
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否定:建設性は必ずしもない。否定だけで留めると会話はそこでストップし、次のステップ(改善や別案提示)に進まない。
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批判:本来は建設的な意図をはらみ、課題解決につなげるために行われる。批判の中に「○○すればもっと良くなる」というポジティブな要素を含められれば、相手の成長機会になる。
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E)実例で比較
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否定の例:「そんな方法はダメだ」
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批判の例:「A案だとお金も労力もかかりすぎる。B案を先に試すほうが効率的ではないか」
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―― 否定だけではコミュニケーションが行き詰まる。本人は批判的思考のつもりでも「相手を落とす」ことがねらいとなっていたら、それは否定になる。要は「何を目的に、どういうスタンスで言うか」が鍵となる。まずは相手の意図や背景を汲み取り、そのうえで改善案や代替案を提示する──これが建設的批判である。
<最後に>
・前回の話でもあったCommunicationを「Common(おしゃべりの土俵)の創造」だとすると、ともに考えるべき土台が何なのか?を保育者同士で共有することが重要になる。わたし子ちゃんは、どうしても「自分の都合」がおしゃべりのテーマになってしまうので、実質的にはCommonの創造ができてないのだ。つまり、Communicabilityが低い人ということになる。
・保育である以上、子どもの安心・楽しさ、そして成長につながるにはどうしたら良いのか?を考える土台づくりが最も大切なCommunicationである。
ぜひ、Communication能力を高めるためにも、
批判的思考を身に付けたいものである。