子どもの意見を汲み取るのは難しい

 

謹賀新年🎍

みなさま,新年を穏やかに過ごされているでしょうか?

 

本年も変わらないスタンスで

皆さんと共に保育のことを考えていければ良いなと思っています.

 

本年もどうぞよろしくお願いいたします.

 

 

 

(1)はじめに〜「こどもまんなか社会」の構築に向けて

 

子どもと向き合うということはどういうことなんだろうか?

 

ある会議で,子どもの意見を聞くためにどうしたら良いか?

という話題になった.

 

言葉を使いこなせるような,高校生くらいなら大人と話をすることもできるかもしれない.

また,政策に反映するようなことも可能なのかもしれない.

それでも,下の記事のような事件は次々と起こる.

全ての意見を拾い上げて,全ての人に対応するなどというのは

あまりにも政治的な響きを持つ言説であり,実際には不可能だ.

https://news.yahoo.co.jp/articles/962245c107465d45fd0df4b3c22385d7a034cd9a?page=1

 

特に意見を言いたくない人もいるし,そもそも意見など持ち合わせていないという

子どもだってかなりの数に登る.

子どもにだって言いたいことがあるはずだという意見こそ,

大人の身勝手な思い込みでしかないのかもしれない.

 

色々な考え方ができる中で,

こども家庭庁は発足し,こどもまんなか社会と呼ばれる理念が走り出す.

私自身もこのことと少なからず関わることになった.

さて,何をどう考えたら良いのだろうか?

 

(2)子どもの意見を汲み取るのは天文学的に難しい

 

まずは子どもの意見を汲み取るということから考えてみたい.

「100カメ」というNHKの番組をご存知だろうか?

色々な場所に数多くのカメラを設置し,そこでの営みをつぶさに観察する番組で,

お笑い芸人が感想を言いながら,その様子を視聴者と一緒に見ている番組である.

👇どうやら1月2日に再放送があるようなので,可能ならぜひご覧いただきたい.

https://www.nhk.jp/p/100cam/ts/QP8MPNM1GL/schedule/te/XRW6ZKMLPQ/

 

園児数150人,スタッフが70人いる大きなこども園で,

夜中の12時まで子どもを預かってくれるという関東にある園だそうだ.

 

そこでの保育の様子に対する私の感想を言うのは憚れる.

なんせポジティブなことを言える要素が少ない.

子どもの声を拾うなどという様子はほとんどなく,

大人が子どもを操作しながら保育を進めている様子が如実に現れている.

カメラがあってもあの様子なのだから,

日頃はもっと大人中心の保育なのだろう.

 

ただ,その原因を先生たちに帰するつもりは毛頭ない.

システム上の問題がかなり大きいと感じる.

 

さて,ここでのポイントは「子どもの声をいかに汲み取るか?」という問題である.

大人中心の保育をしている人たちには子どもの姿が見えていない.

正直,かなりステレオタイプな話しか出てこないだろうと推測してしまう.

なぜなら,子どもを見ているのではなく,大人がこうなって欲しい子どもの

姿に押し込めるような保育をしているから.

そういう人には,行きつ戻りつしたり,よくわからない,整理しきれない

子どものを姿を言語化することはできないから.

 

個人の考えを聞くといっても,こういう人の場合,誰かの声をなぞっているだけのものである.

そういうものも「声」として拾うべきなのか?

それでも,その声(言説)を選んだということに意味があるというのもまた事実.

 

ここまで来ると,次第に民主主義というものにまで疑いの眼差しを向けることになるのだが,

そこはここでは話がデカくなりすぎるので,泣く泣く回避しておこう.

 

まして,「声なき声を拾う」などというのは

言うは易しだが,行うは難しである.

もう,想像を絶する難しさである.

 

またランダムに声を拾うのも難しい.

例えば,ランダムに園を選んで,インタビューやアンケートの協力依頼をしたとしよう.

公立園であれば,OKしてくれるかもしれないが,民間の場合,

それにOKを出す園は,自分たちの意見や考えに少なからず自信を持っている園である.

となると,無作為抽出と本当に言えるのかどうか…

 

もうこうなってくると,天文学的な難しさである.

 

 

 

とまぁ,心配ばかりを並べていても仕方がない.

なんとかして,子どもたちの声,子どもと共に暮らす人々の声を,

なるべく高い精度で,たくさん集めなくてはいけない.

 

現時点で得策があるわけではないが,それを考え出すのが私たちの仕事である.

まだまだ考えていかなくてはいけない.

 

 

 

保育者支援ネットワーク「保育のみかた」運営責任者

博士(教育学)

保育コンサルタント

園庭づくりコーディネーター

[著書]

『ワクワクドキドキ園庭づくり』(ぎょうせい)

『遊びの復権』(共著)(おうみ学術出版会)

保育者の「相互支援」と「学び合い」の場

〒524-0102 滋賀県 守山市 水保町1461-34 

Mail: daihyo@studioflap.or.jp