【理論編】第1回 アフォーダンス~環境のチカラ

 

こんにちは。

子どもの『生きる力』を育む親子の時間
〜心理学から学ぶ子育てのエッセンス<実践編>〜
の裏番組として、今日から10回程度のシリーズで

 

子どもを『観る力』を育てる親の学び
〜心理学から学ぶ子育てのエッセンス<理論編>〜
 
をやってみることにしました。
<実践編>とぴったり連動するわけではなく、
私が軸足を置く生態心理学の視点から
子どもの育ちに関する理論をお伝えしたい
というお話です。
 
こちらは理論的なお話なので、
抽象的で、ちょっとだけ難しい内容になります。
もし興味がないという方はスキップしてもらっても
問題ありません。
 
もし、実践編の裏側を分かりたいみたいな
方がおられたら、こちらを参考にしてもらうと
より理解が深まります。
 
 
(1)アフォーダンスとは?
 
私たちが子どもの発達を考えるとき、
「性格」や「才能」など、生まれつきの要素に注目しがちです。
 
でも実は、子どもの成長にとって大きな意味を持つのは、
その子を取り巻く環境なんです。
ここでいう環境は、単なる背景ではなく、
子どもがそこで何を感じ、どう動き、どう関わるかを形づくる存在です。
 
アメリカの心理学者ジェームズ・ギブソンとエレノア・ギブソン夫妻は、
環境と行動の関係を研究し、「アフォーダンス」という考え方を提示しました。
難しい言葉ですが、私はこれを「環境のチカラ」と呼びます。
 
環境のチカラとは、その場や物が本来持っている“行為の可能性”のことです。
たとえば、階段は「登れる」可能性を、ブランコは「揺れられる」可能性を秘めています。
 
(2)アフォーダンスは生体との関係によって異なる
 
ここで大事なのは、
アフォーダンスが自動的に行動を引き出すわけではないということです。
 
可能性を活かすかどうかは、子ども自身の経験や発達段階、
意欲によって決まります。
だから同じ遊具でも、1歳児と5歳児では使い方も感じ方も違うのです。
 
例えば、1歳の子が芝生の坂道を見ても、
ただ座り込んで眺めるかもしれません。
でも3歳になると「登ってみようかな」と挑戦します。
そして5歳になると「後ろ向きでも登れるかな」とか、
「ゴロゴロと転がってみよう」などと
自分なりの遊び方を工夫します。
同じ坂道でも、子どもの側の発達と経験によって、
引き出される行為が変わるわけです。
 
(3)子どもの育ちを支える大人の役割
 
この視点が面白いのは、私たち大人の役割が「何を教えるか」だけでなく、
「どんな環境を用意するか」にも広がることです。
環境を整えることで、子どもが自分のペースで挑戦したり、
試したり、失敗から学んだりできる。
その繰り返しが、自信や判断力、そして身体や認知の発達につながります。
 
保育現場でも家庭でも、アフォーダンスの考え方はすぐに応用可能。
例えば室内であれば、登ったりくぐったりできる低い台やトンネルを置く。
園庭や公園なら、斜面や段差、いろいろな素材の地面を用意する。
そうすると「この道は走りやすい」「ここは滑るから気をつけよう」
といった感覚も、遊びながら身についていきます。
 
(4)次回は…
 
次回は、歩く前の赤ちゃんに関連する理論です。
このアフォーダンスが赤ちゃんにどのようにも働き始めているのかを、
具体的な事例を交えてお話しします。
 
赤ちゃんはまだ動けないから関係ない?と思うかもしれませんが、
実はこの時期から環境との対話は始まっているんです。
お楽しみに。