保育の危機

 

今日も遊びに来てくださって、ありがとうございます。

 

今日は「保育の危機」というテーマでお話をしたいと思います。

保育の危機を感じる場面が2つの側面からある。

これを何とかして、みんなで乗り越える必要がある。

 

 

(1)保育現場の危機

保育所・こども園の先生たちはとにかく忙しい。

長時間勤務であったり、ダブル、いやトリプルタスクなんてのも

当たり前にあったりする。

保育のことを考える前に、シフトの心配をしたり、

人数が足りない時間の心配をするのが管理職の常だったりもする。

まして、生命を守る仕事である。

日々、どこかにそのプレッシャーを感じながら生活をすることとなる。

 

幼稚園の先生が楽だとは言わないが、生活スタイルはかなり違う。

午後2時に子どもたちは帰り、その後保育室の片付けをしたり、

園庭の整備をしたりしながら、その日にあった出来事を振り返ったり、

明日の構想を練ったりする。

教材準備をしたり、研究に精を出すこともできる。

他の先生との対話、悩みの相談もできるだろう。

 

保育所・こども園の先生方はこれがどのくらいできるのだろうか?

先生たちは「保育の質」を求められるのだが、

それを高めるための時間、エネルギー、そして何よりもゆとりがない。

これが第1の危機である。

 

(2)保育者に憧れない若者たち

私は保育者養成の大学にいる。

個人的な実感として、入学してくる時に心から保育者になりたいと考えている

若者は3割程度だろうか。

他の3割はなりたいとは思っているが、それほどの強い欲望は持っていない。

ちょっとしんどかったりしたら、すぐに逃げてしまう可能性のある人たちである。

残りは何となくこの進路を選んだ人たち。

別に保育者じゃなくても良い。

子どもが好きかと尋ねられたら「嫌いではない」と答えるかもしれない。

 

この傾向は私がいるところの問題ではなく、

それ以外の問題が根っこにある(ここでは深掘りしないが)。

 

これから先、保育はこの社会になくてはならない業界となるのは間違いない。

だが、それを支えようという人材が多くはいないのだ。

 

これが第2の危機である。

 

(3)保育の危機をみんなで乗り越えよう

 

この危機を乗り越える最も効果的な方法は保育者の給料を上げることだろう。

これは政治的な働きかけが必要であり、

中央におられる先生方に是非とも頑張っていただきたい。

 

わたくしが考える別の方法として

学生たちのボランティア活用をお願いしたい。

 

現代人の生活経験の薄さに対する懸念はお伝えしたところだが、

保育者を志す学生たちにも同じことが言える。

 

このことを解消するためには、

学生時代からできるだけたくさん子どもと接する機会が必要だ。

ただ、実習の場合は実習簿を作成したりして、

学生にも現場側にも大きな負担を強いることになる。

 

その点ボランティアはしなきゃいけないことがあるわけではないので、

お互いに気軽に入ってもらうことができる。

また現場側は経済的な負担をすることなく、人手を確保することができる。

その人員によって仕事が楽になるというところまでいかないかもしれないが、

少なくともたくさん動いて子どもと遊んでくれる若者が1名いるだけでも

助かる部分はあるだろうと思う。

 

学生側も、プレッシャーが少なく子どもと接することができるので、

子どものこと、保育のこと、環境のこと、表現のことなどを

少しでも考えることができるし、授業で学んだことを振り返ることができるかもしれない。

単位が絡んでいないから、素朴に疑問をぶつけることもしやすい。

私には一石二鳥どころか、何鳥にもなるんじゃないかと思える。

 

(4)終わりに

 

現在のまま保育の危機をそのままにしておいた場合、

保育者は時間に追われるばかりで、学ばないことがデフォルト化してしまう気がしている。

問題意識を持って勉強したいという先生は多いが、時間がないということと、

勉強をした経験があまりないため、何をどう勉強したら良いか知らない人も少なくない。

講演を依頼していただくときに「明日からすぐに使えるスキルを教えてください」という

文言が入ることがあるが、そういう学び方しかできなくなる。

 

明日から使えるってことは、明後日、明々後日には使えなくなりますよ。

と私は返答することにしているが、

そんなテクニックの大部分は付け焼き刃にしかならない。

 

学ぶというのは知識・情報を得ることではない。

そういうことが分かってきたら、学ぶことは楽しくなるし、

明日から使える情報をくれみたいな依頼はしなくなるはずである。

保育者&保育者になりたい人が、学ぶ時間・機会・エネルギーを豊かに確保し、

学ぶ力を育てることで、保育の危機を脱することを目指そうじゃないか。

保育者支援ネットワーク「保育のみかた」運営責任者

博士(教育学)

保育コンサルタント

園庭づくりコーディネーター

[著書]

『ワクワクドキドキ園庭づくり』(ぎょうせい)

『遊びの復権』(共著)(おうみ学術出版会)

保育者の「相互支援」と「学び合い」の場

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