表題の本を読んだ。私にとっては心奮える本だった。学術書ではあるが、難解ということはなく、保育者にとっても学び多い著書であると感じる。
最近、アートマインドということを考えている私にとっては、①環境を知るということ、②アートとは単なる自己表現ではないということ、③環境の中にある可能性、を考える機会を毎朝与えてもらった(本書を読むのがその期間の朝の日課であった)。
本書は私も読んでいるティム・インゴルドの考えを土台にしている。ちなみに、ティム・インゴルドは生態心理学の枠組みを作ったジェームズ・ギブソンに多大な影響を受けている文化人類学者であり、本書にもかなりギブソンが引用されていた。
本書は三部構成である。第一部は「環境の知覚」。まず初めに、環境を知るとはどういうことか?を論じている。第二部は具体的な「アート実践」をテーマとしている。特に、私は鈴木ヒラクというアーティストに心惹かれた。さっそく、ネットでインタビュー動画やパフォーマンスを視聴し、著書を購入した。これから、しばらくは彼のアートから学ぶことになりそう。第三部は第一部・第二部の内容を受けて、筆者が大学で行なったアートプロジェクトの実践を素材として、「環境が芸術になるとき」を具体的に描いている。
僕にとってのキーワードは「視の制度」「テクステリティ」「照応」という感じだろうか。
僕が読んだ著者の主張は以下の通りである。アートというものは単に内側にあるものを表現(アウトプット)するだけのものではない。環境(素材)と照応しながら、環境の内側から、ともにつくるものである。そのためには環境へのまなざしが鳥観図的地図というよりも、地誌的都市景観図のような【共にあるもの】である必要がある。その具体的なエクササイズとして肌理を撮る、スタンピング、フロッタージュ、サウンドスケープ・デザイン、ドローイングなどの実践行為がある。
私の研究にとって、本書がどのような意味を持つかという視点での言及はここでは避けるが、かなり有意義な邂逅であった。その有意義さの背景には、インゴルドと格闘していること、アートに対する意識があったことが機能していたように思う。