保育記録を深めたい人のために

今日の更新が遅くなった理由は…

 

 
(BGM Bryan Kesller Sunday Morning
 
 
 
 
3月10日付のブログで保育記録の取り方に関する提案をした。
記録の取り方はある程度具体的に書いたので、今日は考察について述べたい。
 
(1)考察とは何か?
論文は問題(序論とも呼ばれる)、方法、結果、考察というのが主要な四要素である。それ以外にもタイトルとか参考文献とかという重要要素があるが、ここでは割愛。
 
考察とは何か?
大学生の論文指導をしていると、最初の頃は結果と考察の区別がつかない学生がとても多い。
結果は客観的な事実である。数字のデータとか、行動観察の描写などを目的に合わせてわかりやすく記述する(行動観察の描写がどこまで客観的かというのは別問題として)。
 
考察は問題・目的に照らしながら、結果を解釈することである。結果で示したデータを使って議論を展開すると言っても良い。ただ、学生がよくやりがちなのは、結果から離れすぎて単なる理論の後追いになること。これでは自分で言いたいことを勝手に論じることになってしまう。この辺りが大変に難しい。
 
考察というのは、実は非常に大切なもの。これがあるかないかで、深まりは全く異なる。
 
(2)考察の具体例
 
例えば、下の写真に関するエピソードを書いたとする。

キーワード 足湯・道後温泉・家族旅行・2019年12月29日・マスクをしない最後の旅行 
エピソード
2019年12月29日新型コロナウィルスが確認されたまさにその日、私は家族と一緒に道後温泉にいた。この写真は道後温泉の街中にある足湯に浸かった時のものである。ここは街のど真ん中にある足湯で、私たちが到着した頃には、別の家族が浸かっていた。私たちはどうするか一瞬迷い、みんなでどうするか相談したが、「せっかく来たのだし、ちょっとやってみたいよね」と話をして、先客には申し訳ないと思いつつも、後ろで待たせてもらった。利用者につき、●分までのような表示はない。「どのくらい待つのだろうか?」と若干は考えたが、一方で、「急かすようで申し訳ないな」とも思った。5分くらいすると気を遣ってくれたのか、先客が終わってくれた。我々が入ったのは13:35頃だった。足湯に浸かり始めると、最初はぬるく感じるくらいの湯加減で、「熱くないね」などと言いながら入っていた。しかし、5分くらいするとだんだんと上半身までが上半身までが温かくなって来る感覚が生まれてきた。しばらくすると「もう熱い」かもと言って娘ふたりが終わり、次の方も待ち始めたので、妻と長男、私も終わることにした。時間にしたら10分ちょっとであった。いま思えば、マスクをせずに街中を歩いたのはこの時が最後であった。
 
これが研究で言うところの結果に当たる。基本的には解釈をせずに、なるべく客観的な事実を書くことを心がける。
 
さて、次に考察である。論文の場合の考察は問題で指摘したことに対して、結果がどのように貢献したのか?問題を解決できたかどうか?を論じることになる。だから、同じデータであっても、考察の仕方はたくさんある。この写真で言えば、家族関係や街中に無料の足湯を置く意義、日本人のマナー、足湯の衛生問題など、議論の視点は数多く見出せるだろう。
 
<考察:足湯制度は日本ならではなのだろうか?>
この街中に無料の足湯を設置するというシステムはアメリカなどでも通用するのだろうか?アメリカと言っても広いので、場所にもよるとは思うが、私が住んでいた街にあったら、そこそこ人気は出たんじゃないだろうか?私が住んでいた街には大きな映画館やショッピングモールがあった。そういうところに置いてあったら好む人がいるかもしれない。一方で、衛生面の問題で嫌がる人がいる可能性もある。また、道後温泉で前の人が適度な時間で終わってくれたようなことはアメリカでは起こらない可能性もある。その場合、1人◯分までなどのルールを決めておかないといけない。訴訟社会と言われるアメリカの場合はトラブルになる可能性もあるかもしれない。
 
みたいな感じだろうか。
 
論文であれば、似たような研究をしている関連の先行研究などとの比較をしたり、この研究の問題点を指摘したりすることもある。
 
(3)最後に
 
保育記録の場合は、起こった事実から議論を展開させることを意識すれば良いし、できれば次の保育実践につながる話に持っていくと良いだろう。起こった事実を基点にして、縦横に話を展開することを意識することで、今よりも少しだけ深まりのある保育記録が書けるのではないだろうか?
 
なお、これを毎回していたら時間がかかってしまうかもしれないので、週末を使って特に印象的だったエピソードについて書くみたいな感じで、最初は良いのかもしれない。その辺りは各園での方針もあると思うので。
 
 
 

保育者支援ネットワーク「保育のみかた」運営責任者

博士(教育学)

保育コンサルタント

園庭づくりコーディネーター

[著書]

『ワクワクドキドキ園庭づくり』(ぎょうせい)

『遊びの復権』(共著)(おうみ学術出版会)

保育者の「相互支援」と「学び合い」の場

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