第2回 あの数字は、何のための数字だったのか?

 

 

前回、私たちは「暑い=危険」という前提が、

いつのまにか共有されてしまっている、というお話をしました。

 

今日は、その前提を支えている一つの数字

——「暑さ指数」について、調べてみたことをお伝えします。

少しだけ理屈っぽい回になりますが、お付き合いください。

知っておくと、現場での見方が少し変わると思うのです。

 

1.  暑さ指数(WBGT)とは?

 

まず、用語を整理させてください。

夏になると発表される「熱中症警戒アラート」。

これは「暑さ指数(WBGT)」という気温ではない数値をもとにしています。

これは気温や湿度、日射や地面からの照り返しを組み合わせた指標です。

特に発汗や汗の蒸発が強く関連しているそうです。

要するに汗が蒸発しやすければ体温が低下しやすいので良いのですが、

湿度が高くて汗が蒸発しにくい時は危険度が高いということが言われています。

 

2. もともとは、兵士のための数字だった

 

暑さ指数は、歴史をたどると、1954年、アメリカの海兵隊の新兵訓練所まで戻ります。

湿度の高い土地で、重い装備を背負い、厳しい訓練を課される若い兵士たちが、次々と熱中症で倒れる。

それを防ぐために作られたのが、この数字の出発点だそうです。

 

その後、この指標はスポーツの世界に取り入れられます。

1975年には、アメリカのスポーツ医学の団体が

「暑さ指数が28を超えたら、10マイル(約16キロ)以上の長距離走は禁止」

という指針を出したそうです。

やがて国際的な基準となり、日本でも1990年代から、

スポーツ活動中の事故を防ぐためのガイドラインとして広まっていきました。

 

では、園庭の子どもはどうでしょう。

自分のペースで走り、飽きたらしゃがみ込み、喉が渇けば水を飲みに行き、

木陰でだんごむしを眺め、また駆け出していく。

この、自分でこまめに緩急をつけられる小さな体は、あの数字が生まれたときに、想定されていたでしょうか。

 

3. 基準は正しいが、運用上の工夫は可能では?

 

誤解のないように申し上げますが、

私は「暑さ指数はあてにならない」と言いたいのではありません。

あの数字は、極めて真面目に、科学的に作られた、立派な指標です。

 

問題は数字そのものではない。

問題は運用面にあるのではないか?ということです。

 

この数字には、責任の重さも貼りつけられています。

たとえば労働の現場では、暑さ指数を無視して人が倒れれば、管理者が責任を問われます。

環境省も、管理者のいる施設には「対策が取れなければ中止・延期の検討を」と求めている。

園は、まさにその「管理者のいる施設」です。

だから現場が「アラートが出たら、とりあえず中止」へと傾くのは、臆病だからではない。

倒れたら責められる、という構造の中に、置かれているからなのです。

 

数字は正しい。

だけど、運用の仕方が軍隊やスポーツとは違うかもしれない。

園庭ならではの運用の仕方があるのではないだろうか?

ということを考えてみたいのです。

 

次回はいよいよ、その「目の前の子どもの体」が、暑さとどう付き合っているのか

——実際の園庭の姿から、考えてみたいと思います。

保育者支援ネットワーク「保育のみかた」運営責任者

博士(教育学)

保育コンサルタント

園庭づくりコーディネーター

[著書]

『ワクワクドキドキ園庭づくり』(ぎょうせい)

『遊びの復権』(共著)(おうみ学術出版会)

保育者と保護者の「相互支援」と「学び合い」の場

〒520-0026 滋賀県 大津市 桜野町2丁目4-7-517 

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