「遊び始め」を考える

(画像 https://www.sony-ef.or.jp/preschool/blog/20220228.html)

 

 

(0)はじめに

 

しばらく更新がなかったのに、

ここにきて、2日連続の更新という、

私の気まぐれぶりが発揮されている感じですが、

お気になさらず。

 

さて、今日は久しぶりの音声配信も復活いたします。

お楽しみいただければと思います。

 

今日のテーマは「遊び始め」です。

 

(BGM Bryan Kessler〜ゆるカフェ・ハワイアンより Sunday Morning

 

 

(1)テーマとの出会い

 

今年から私のゼミに入ってくれた大学3回生といろんな話をしていました。

その中で、直感的にその学生さんの興味は以前もここでご紹介した

『遊びを育てる』野村寿子著(佐々木正人先生との対談あり)

で描かれていることに繋がるんじゃないか?

ということを感じたんです。

 

そこで、この本を紹介し、まずは一緒に読んで、そのことについて、

なんでもいいから話をしていこうということになったのです。

 

私も1年ぶりくらいに読み返してみようと思ってパッと本を開くと

第1章の冒頭部分で今日のテーマ「遊び始め」に関する話題が出てきたんです。

 

(2)遊び始めの子どもたち

 

実は、私自身の博士論文でも「遊び始め」に関しては

結構な紙数を費やして分析しました。

 

私が捉えた遊び始めと野村寿子さんが言うところの遊び始めはちょっと違うのですが、

遊びがどう始まるかは、いずれにしても大変興味深いものがあります。

 

遊びの定義を追究することが不毛に近いくらい

遊びというのはいろいろな形があります。

ごっこ遊びと言っても、何をもってごっこ遊びとするかというのは

非常に定義が難しい。

そのため始まりと終わりを見定めることも大変に難しい作業です。

 

ここでは、野村先生は、楽しいとか面白いとか

子どもの心が動き始めたところを「遊び始め」と捉えて話を進めておられます。

 

この瞬間は先生方にも見覚えのある瞬間ではないかと思いますが、

それはそれは本当に「感動的」ですよね。

 

『遊びを育てる』の中では、先生の手の中にいるてんとう虫を

じっと食い入るように見つめている園児の写真や

園庭の草花に気づいて、「見つけた!」という表情を見せている園児の写真、

さらにはブランコに乗って揺れていると、同じリズムをとりながら揺れている先生の姿に気づき、

先生の頬に手を置く園児の写真

園児の心が動いた瞬間を写真に収めています。

 

「あっ、これ面白い!」

って目が輝いた瞬間の子どもたちの顔は

まわりの人たちを圧倒的に幸せにしてくれる力がありますよね。

 

(3)「あっ!」という瞬間を生み出す

 

野村先生はその瞬間を生み出すためには

「出会い」

が大切であると言っています。

 

P3

遊びの始まりは、何と出会うか、誰が出会うかによって全く個性的です。

 

私はこの文章の中に3つのポイントがある気がします。

まず「何と」という部分。

その瞬間を生み出すためには誰がの前に「何と」があるんですよね。

私たちの生は常にまわりと共にある。そして、まわりが先にある。

まわりの中に私たちが入らせてもらうのですから。

とするなら、どういうまわりを作っているのか?が問われます。

「あっ!」と思えるまわりが設えられているのか?

「遊びが始まるまわり」になっているのか?

常に問い続ける必要があるような気がします。

 

2つ目と3つ目のポイントは

「誰が」ですね。

 

2つ目のポイントの誰は「園児のこと」

3つ目のポイントの誰は「まわりにいる大人のこと」

です。

 

園児が目の前にある世界としっかり向き合い、それを感じ、面白さに気づけること。

これは日々の暮らしの中で「世界と向き合っているか」が大切になるでしょう。

道端に咲いているタンポポに目が奪われる

アリの巣を見つけて、それをじっと見ている

そういう好奇心を持った子どもであるか?ということですね。

 

子どもがそういう好奇心を持てるかどうかは、

そういう時間をまわりにいる大人が大切にできているかどうかにかかっている。

そこで3つ目のポイント「子どものまわりにいる大人のクオリティ」です。

 

子どもは障害を持っていようがいまいが、その子なりに世界と向き合う力を持っています。

それを認め、共に寄り添い、じっくりと世界を感じる時間を確保するかどうかは、

まわりにいる大人たちにかかっています。

 

日頃からそれができていると、

子どもたちは本当に豊かに世界と出会ってくれる。

そして、そこで感じた豊かさを大人にも教えてくれています。

 

「あっ!」という気づきの瞬間を子どもが見逃さずに捕まえる。

そして、そういう出会いをしている子どもの瞬間を大人も感じ取って邪魔をしない。

このことが大事なのではないかと思います。

 

(4)あらゆる行為は知覚と共にある

 

生き物のあらゆる行為は知覚と共にあります。

知覚しながら行為をするし、

知覚をするために行為をすることもあります。

また、行為をしながら同時に知覚をしています。

 

まわりを知るということ=知覚です。

子どもたちが何を知覚しているかは行為をしばらく見ていれば

少しずつ、おぼろげに見えてくるはずです。

 

遊び始めでの「出会い」は、まさに知覚です。

子どもがまわりを知覚し続ける日々の中で、

「あっ!」という知覚を経験することで遊びが始まるのです。

 

我々大人たちは、子どもたちの知覚を知覚しましょう。

そして、彼ら彼女らが感じている世界を共に感じ、我と彼の感じ方の違いを知り、

子どもたちの世界を感じることから遊びの始まりを理解してみませんか?

保育者支援ネットワーク「保育のみかた」運営責任者

博士(教育学)

保育コンサルタント

園庭づくりコーディネーター

[著書]

『ワクワクドキドキ園庭づくり』(ぎょうせい)

『遊びの復権』(共著)(おうみ学術出版会)

保育者の「相互支援」と「学び合い」の場

〒524-0102 滋賀県 守山市 水保町1461-34 

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