乳児園庭を考えた

 

 

今週は2つの園で研修会の講師を担当させていただいた。私の関心ど真ん中である園庭のことを考える研修であった。特に、どちらの園にも素敵な乳児園庭があり、それも非常に工夫が為されている園庭であった。そこで、ここでは私が何を考えたか?をご紹介したい。

 

乳児園庭の最重要ポイントは「移動」である。なぜ移動か?いくつかの理由があるが、最も重要なのは歩けるようになった乳児は歩くことが楽しくて仕方ないからである。10歳くらいまでの子どもは何せ移動をすることが好きだ。歩く、走る、乗り物で移動する、スキップをする、縄跳びをしていても、跳べるようになったら、次は走り跳びをする子どもはとても多い。こうして、移動をしながら子ども達は何かを感じていると強く推察できる。Held & Hein(1963)やアクティブタッチの一連の研究で言われているように、能動的な動き(移動)と受動的な動きでは入力される情報量は天と地ほどの差があると考えられる。ハイハイによる移動が可能になった以降、どれだけ(自律)移動を楽しむことができる環境を作るかは、保護者・保育者にとって優先すべき課題である。

 

今週私が訪れた園では、タイヤを活用したり、歩きたくなるような歩行路が用意されたりしていた。他にも、木の根や穴があることによる凸凹があったり、枯れ葉が落ちていたりして、「歩きたくなるしかけ」が色々な形で用意されていた。移動の遊びには反復が必要である。反復を可能にするには、1回ずつの歩行経験が異なる経験(になる可能性がある)であることが重要だ。つまり、さっきの歩行と次の歩行が異なる可能性が低いとなると歩こうという気持ちにならない。大人がいつもの道路を歩いていても面白くないが、子どもが枯れ葉に足を埋めながら歩くことで音も違う、足裏や足首に葉が当たる感触が違う。こういう違いが子ども達にとってはたまらなく面白い。ミスったら転んじゃうかもしれない場所も、子どもは歩いてみたくなる場所だ(下の写真2枚目)。大人はちょっと心配だったりするが、渡ってみたくなる。道路の縁石などその典型例だろう。

移動の機会をたくさん用意できたら、次に「操作」を考えたい。「幼児期に身につけておきたい36の動き」の中には18の操作がある。操作というのは、基本的には何かの道具を使うものなので、持つ、運ぶ、渡す、打つ、投げる、蹴るなどが当てはまる。そういう動作が乳児園庭にいくつくらいあるか?を改めてチェックしてみてもらいたい(もちろん、幼児園庭も)。そのためには「遊離物」が園庭にどのくらいあるかをチェックすることも必要だ。ボールはもちろん、色々な遊び道具、木の実や葉っぱなどの自然物もそれにあたる。そういったものとの「対話」を通して、世界を知り、自分を知ることができる。

 

*遊離物とは、周囲が全て媒質(空気や水)に接しているものを指す。逆にある面が物質(主に地面や壁)に付いているものを指す。遊離物は移動できるが、付着物は移動することができない。

 

これらが豊かにある乳児園庭を作ることができたら、あとは先生達も一緒になって遊ぼう。先生の笑顔があることが園児達を安心させ、遊ぶエネルギーになることは言うまでもない。願わくば、園児達が遊ぶエネルギーを爆発させた後に、先生は自然に遊びから離脱して、子ども達ができるだけ先生がいなくても遊べるようになるのが理想である。(まぁ、ここは(今日のテーマから外れて)別の話になるので、違う時にまた書かせてもらうことにしよう。)

 

ということで、ぜひ、充実した乳児園庭を作ってくださいね。その充実は、幼児期の育ちに直結するので。

保育者支援ネットワーク「保育のみかた」運営責任者

博士(教育学)

保育コンサルタント

園庭づくりコーディネーター

[著書]

『ワクワクドキドキ園庭づくり』(ぎょうせい)

『遊びの復権』(共著)(おうみ学術出版会)

保育者の「相互支援」と「学び合い」の場

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