手を使うことは、とっても大切です

 

こんにちは。

 

園内研究会の流れもひと段落したかな

という感じで、多くの園は来週で夏休みモードですね。

私自身も期末試験→成績付けが終われば、ようやく夏休みに入れます。

そうなったら、研究モードに切り替えができますね。

 

ここまでの園内研で感じてきたことを文字に起こしつつ、

データを取ったり、分析をしたり、

入ってしまえば夏休みはあっという間に終わるので、

大切に使いたいと思います。

 

さて、今日は「いかに手を使うか?」という話をしたいと思います。

 

BGM  Bryan Kessler ゆるカフェより  If She Knew What She Wants

 

(1)不器用な子どもたち

 

ある園内研にお邪魔した際、保育室での遊びで、手の動きが少ないことが気になった。

感触遊びとして寒天やスライムを使った遊びをしたり、

ティッシュの空箱やトイレットペーパーの芯を使っての製作、

ボールを使った協力を要する複数人での遊びなど

でも、そこにあるのは持つ、つなぐ、握る、つぶす、つまむなど

力の加減調整があまり必要ない、

ほとんど道具も使わないような動きばかりだった。

 

先生に詳しく尋ねると、5歳であってもお箸を使える園児が少なく、

不器用な園児が多いとのことだった。

 

(2)土台としての運動発達〜「操作」と遊び

 

動き(運動)の発達は発達全体の土台である。

動きが発達すると他の領域の発達が促進される。

 

例えば、乳児期に座位や立位を獲得することと社会性や言語の発達が連動するように、

幼児期でもその手の連動は起こっていると考えられる。

幼児期の複雑すぎるから、ちょっとやそっとではその関連は見抜けないけど…

 

子どもの運動発達は大きく3つの領域に分けて考えることができる。

姿勢制御:立つ・座る・しゃがむ・浮くなど

移動:歩く・走る・スキップをする・ギャロップをする・泳ぐなど

操作:持つ・放す・投げる・蹴る・切る・削る・剥くなど

 

当然のことながら手の動きは「操作」ということになる。

そして、操作は基本的に物の操作ということになるのであり、

物と良好な関係を作ることが必要になる。

 

(3)もっと道具を使おう〜昔遊びの見直し

 

現代の子どもは物と出会う機会が少ない。

刃物類は危ないと言われ、

工具もほとんど持つことがない。

お箸は3歳では持てないと保育者ですら思っている人がいる。

そんなわけない。

スプーンやフォークですらちゃんと使えない子がめちゃくちゃ多い。

 

家庭にいても、新聞紙すらない。

新聞紙を使って兜を折ったりすることもない。

 

一方で、昔遊びは

お手玉、竹とんぼ、めんこ、竹馬、ビー玉など、

基本的には物を使った遊びになる。

 

このことの影響は実は大きいと考えられる。

先にも書いたが、物を操作するとは物との関係を作ることである。

 

箸を操作して豆をつまむという動きを考えてみたらわかる。

まずは箸と関係を作って、箸を自在に動かせるようになることが必要だ。

そして、強さや動きを微妙に調節しながら、箸を介して豆との関係を作る。

そうやって、豆を食べることができる。

 

これは「調節する」という(心理的な)動きをできるようになることでもある。

全力を出したり、適当な力加減で動かすのではなく、

まさに適度に、ちょうど良く調整して動かす必要があるのだ。

 

(4)終わりに

 

人との関係も同じ。

相手に合わせて言い方、伝え方を調節したり、

自分の意見を投げつけるのではなく、程よく調節しながら伝える。

そういう心理的な動きを持っていることで、

言語を獲得した後に、相手に合わせたり、相手の意見を聞いたりしながら

調整することができるようになるのではないだろうか?

 

そして、今となっては、そういうことができない人が大人が実に多い。

これは、包丁がピーラーをはじめとする便利な道具に置き換わり、

さらにはあらゆるものが便利な機械に置き換わってきた

現代社会と符合する動きだと言っては、飛躍しすぎだろうか?

 

 

 

保育者支援ネットワーク「保育のみかた」運営責任者

博士(教育学)

保育コンサルタント

園庭づくりコーディネーター

[著書]

『ワクワクドキドキ園庭づくり』(ぎょうせい)

『遊びの復権』(共著)(おうみ学術出版会)

保育者の「相互支援」と「学び合い」の場

〒524-0102 滋賀県 守山市 水保町1461-34 

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