主体的に動くことの意義

 

こんにちは。

またしてもあっという間に月日が経ってしまいました(笑)

 

さて、今日はちゃんとしたお話です。

前回の雑談でもちょっと触れたのですが、

最近、めちゃくちゃ多く聞こえてくる話。

それは「主体性の保育」に移行しているが、

うまくいかないという話です。

 

ここでも、何回も話してきた「主体性とは何か?」という話ですね。

その辺りを十分に考えないままに

「主体性の保育」なんて表現をしちゃったりしていること自体が

問題を孕んでいますね。

 

トップページで「主体性」を検索していただいたら、

たくさん出てきますので、お時間が許されるようなら

ぜひ読んで・聞いてみてください。

 

まずは主体性を理解せずに

主体性を大切にした保育はできません。

 

 👇 例えば…これとか

主体性と自主性の違いって?

 👇これとかも…

見守る保育② 自主性と主体性

さて、今日はこれまでにお伝えしていない話をさせてもらいます。

 

アメリカの知覚心理学者ジェームズ・ギブソンという人が

「私たちは動くために知覚するが、知覚するためにはまた、動かなければならない」

という有名な言葉を残しました。

つまり、知覚するためには「能動性」が必要だとしたのです。

知覚のことを英語でperceptionと言いますが、

ギブソンは著書の中で知覚とは「情報を拾い上げること」

Information Pickup

と書きました。

pickupなんですよね。

 

そのことを実証する実験データはいくつかあるのですが、

ここでは2つ有名な実験をご紹介します。

 

1つはネコを使った実験(Held & Hein,1963)です。

👇この実験についても、若干触れていました

乳児園庭を考えた

双子猫(PとA)が装置に繋がれています。

Pはゴンドラに乗せられているので、自力では移動できません。

Aは自律移動ができる。

生まれた直後にこの状態にされて、

特定の時間のみ、限られた空間を移動できる

という実験です(倫理的にいまはできない実験です)。

 

この実験では、Aは視覚が正常に育ちましたが、

自律移動が制限されていたPは視覚が正常には育ちませんでした。

能動的に動くことの大切さがわかる実験の1つです。

 

 

 

2つ目は「アクティブ・タッチ」に関する実験です。

 

いま、手元にペンなど長細いものはありますか?

目を閉じて、それを手に持ってみてください。

目を閉じたまま、ペンを動かさずに、ペンの長さを測ってください。

大体どのくらいの長さかを持った手とは逆の手の

親指と人差し指を使って示してください。

 

次に、同じように目を閉じます。

そして、ペンの端を持って、ペンを振ってみてください。

同様に、ペンの長さを逆の手で示してください。

 

どちらの方法でも、もしかしたら長さを正確に

測ることができたのではないでしょうか?

 

これはどちらもあなた自身が能動的に動いているから

正確な情報を獲得することができたのです。

 

ちなみに、授業などでは違う方法を使うのですが、

長くなるのでここでは割愛します。

 

能動的に動くことで、私たちは必要な情報を獲得しようと

(無意識のうちに)しています。

能動的に動くことで、世界を知る粒度が高まるのです。

 

つまり、能動的に動くことで

より「経験」が豊かになるのです。

 

私は「主体性とは自ら選択肢を持って、根拠に基づいて選択する力である」

とこれまで説明してきました。

 

自分で考えて動く。

自律的に動く。

能動的に(自分から)動く。

 

このことによって、子どもたちは

世界と出会う

ことができるのです。

 

親に手を引かれて出会う世界と

自ら動いて出会う世界は違うのです。

 

このことを理解することで、

主体性を大切にすることの意味、

子どもの人権を大切にすることの意味が

わかるのではないでしょうか?

 

もし、もう少しこのことを理解したい、

さらに専門的に学んでみたいという方は、

この本から入ってみてください。

保育や子育てに関係なさそうと思えるかもしれないので、

焦らずに、じっくりと読んでみていただくことをお勧めします。

 

 

 

 

保育者支援ネットワーク「保育のみかた」運営責任者

博士(教育学)

保育コンサルタント

園庭づくりコーディネーター

[著書]

『ワクワクドキドキ園庭づくり』(ぎょうせい)

『遊びの復権』(共著)(おうみ学術出版会)

保育者の「相互支援」と「学び合い」の場

〒524-0102 滋賀県 守山市 水保町1461-34 

Mail: daihyo@studioflap.or.jp